お陰様で、当院には、頭痛に悩む患者さんが、毎日来ていただいています。
頭痛診療は、まずは問診が命です。
どんな痛みなのか、どのくらい頭痛はつづくのか、その頻度は? いつ起こるのか?
頭痛にともなって、吐き気やめまいといった症状はないか?
光るものをみたり、うるさい音や、臭いで調子悪くならないか?
天気や月経と関係はないか?
痛いときには痛み止めの薬をのんでいるか、どのくらいの頻度でのむのか?
ほかに病気はないのか、
ふだんの生活はどうか、ご職業は何か・・
などなど、あらゆることをお聞きし、頭痛の種類をだいたい見極めておきます。
そして脳腫瘍や出血など、原因のある頭痛(二次性頭痛)でないか見極めるために、MRIやCTなどの検査します。
そのうえで、頭痛の種類を判断します。
手術が必要な病気でなければ、病院に紹介しますが、そうでなければ・・
まず、頭痛の予防について日常生活のことからお話をし、そのうえで予防薬や頭痛薬について、お話して治療をしていきます。
頭痛は、薬で抑え込むのではなく、予防が第一、と考えます。
筋緊張性頭痛の人には、首や肩こりを予防していくような生活を、片頭痛の人には誘発されるような原因をわかっていただいて、なるべくその原因を避けるようにします。
とりわけ、頭痛治療でやっかいなのは、薬物乱用性頭痛です。
痛み止めをのめばのむほど、効かなくなってきたり、飲んだことにより頭痛がかえって悪化したり。
まさに、深みにはまってしまいます。
患者さんのなかにはとんでもない人もいて、
今日は大事な会議があるので、前もって頭痛薬飲んどこうとか、毎日・朝昼晩3回のんでおけば安心、とか言っている人もいます。
こんな患者さんにお会いすると、何とかしなきゃと思います。
こうした薬物乱用を避けることが、頭痛治療には肝心で、そのためには予防する生活と予防薬が重要です。
昨年から、片頭痛予防薬として注射薬(抗CGRP製剤)が認可されたことは、周知の事実ですが、この薬ははっきり言って優れものです。
当院では80人以上に投与しましたが、そのうち89%の人が満足いただけるほどよくなりまして、なんせよく効きます。
頭痛で仕事を辞めた人が復帰できたり、頭痛で寝込むことがなくなったり。
頭痛薬なしでも済むようになったり。
頭痛のひどかった時と比べて、まるで別世界にきたようだ、とまで言った方もいます。
しかもほとんど副作用がないのです。
一番の難点は値段が高いことと、
片頭痛以外の頭痛にはきかないので、頭痛専門医による、きちっとした片頭痛の診断が必要なことです。
当院では約80人のうち、3人の方はまったく頭痛が無くなって、注射を止めても頭痛がなくなった、つまり片頭痛から解放されて卒薬できたのです。
まだまだ症例を重ねていかないとなんとも言えませんが、片頭痛の撲滅も夢ではなくなったのです。
ところで、実は私は頭痛持ちではありません。
私にとって頭痛といえば、酒をたらふく飲んだあとの、いわゆる二日酔いと
最近やっていませんが、スキューバ・ダイビング中の水圧の変化による頭痛ぐらいです。
でもこうして毎日頭痛患者さんの悩みを聞いていますと、不思議なもので、患者さんが自分に乗り移ったかのように、頭痛の苦しさが分かってきました。
頭痛に苦しんだことはないのに、頭痛患者さんは、こんな時に痛いんだろうなとか、吐き気がしてくるんだろうなとか、
朝おきて雨がふると、頭痛患者さん大変だろうなとか、患者さんの身になって考えられるようになってきました。
あたかも、数日前、頭痛専門医の更新の認定証が送られてきました。
5年間有効なので、頭痛専門医として6年目に入った、ということですね。
その資格に恥じぬよう、これからも頭痛患者さんの気持ちによりそって、そして自分が頭痛患者さんになりきったつもりで、診療にあたっていきたいと思います。