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院長ブログ

認知症と運転免許証について

2017年3月18日
3月15日に開かれた、医療安全管理研修会での話です。

テーマは、高齢者に関する運転免許制度について、そして医師会はどう対処すべきか、という問題についてです。

みなさん、関心が高いせいか、たくさんの医療従事者の方が出席されていました。


ご存知のとおり、高齢者の運転手による、痛ましい事故が社会問題になっておりますが、高齢者で認知症と判断された方には、運転を少しでも早く諦めてもらって、事故を未然に防ごうという取り組みが、まず警察の方から説明されました。

今度から、75歳以上の方はまず運転免許証書き換えのとき、認知機能検査が義務付けられ、1群、2群、3群にふりわけられます。

そして、認知機能低下が明らかでないドライバーである2群・3群の方は、高齢者講習等を経たのちに、引き続き運転免許がもらえますが、認知機能低下の恐れのある1群と判断された方は、かかりつけ医の判断をうけなければなりません。

そしてさらに医師が、認知症と判断した場合、免許取り消し、ないし免許停止の処分がくだされるわけです。
残酷ですねぇ。


このしくみがあれば、認知症の方の運転手が減って、事故がすこしでも減らせるという大きなメリットがあります。

しかし、一方で公共交通の便が悪く、車という移動手段がかかせないようなところに住んでいらっしゃる、高齢者の方は、生活にこまってしまいますよね。


私のところに通っていらっしゃる患者さんでも、困った困ったとの声がよせられています。



もし、1群と判断された高齢者のドライバーが来院したとき、医師がゆだねられた判断は・・

この問題について取り組んでいらっしゃる、医師会理事のK先生からのお話がありました。

まず、すでに認知症という病名がついていて、認知症予防薬が処方されているような方は、本人や家族が納得されたうえで、認知症と判断しましょう。

判断にまよう患者さんは、専門医(特に大きな病院の認知症を専門とした医師)に判断をゆだねましょう。

ということでした。


では、今まで認知症とは診断されずに来院して、長谷川式認知症テストで認知症と判断された方はどうすればいいか。

すべて、認知症の専門医に丸投げしていいのでしょうか。

それでは、専門医がパンクしてしまいます。


私は、脳疾患の患者さんにかかわっているうえに、当院ではCTとMRIがありますので、ある程度の診断ができると思います。

患者さんがいらっしゃって、認知症と診断したら恨まれちゃうかも・・・と心配になります。

簡単に、「認知症」の診断書を書いてしまうと、自家用車という交通手段をとられ、普段の生活に大変な打撃です。

患者さんの心も傷ついちゃいますね。


かといって、その方がもし本当に事故を起こしてしまったら、責任はだれがとるの?ってことにもなるし。

診断書を書いた医師が責任を問われては、切ないですね。



結局いきつくところが、患者さん本人やご家族を説得して、「免許自主返納」をすすめる ということでした。

認知症と診断されて、そのままにしておいたら、バッサリと「免許取り消し」になってしまいますから、それよりはマシ、ということです。

そして、免許を自主返納すれば、「運転経歴証明書」をもらうことができます。これがあれば、何かと特典があるのです。

それはよかったじゃん!とはじめは思いました。



でもその特典とは・・・

なぁんだ、これっぽっち・・と思わせることばかりなんです。

たとえば、タクシーにただで乗れるのか、と思えばたったの10%オフ。

温泉にいけば100円オフ、とか貸タオル代がタダとか・・

いずれも、あんまり儲けた気分になりませんね。ふざけんな、バカヤローなんて声も聞こえそうです。

それでも、地域の企業が一生懸命サポートしてくださった結果なのですから、ありがたく受け止めなければなりません。


市役所の方には、過疎地の路線バスの便を増やすとか、鉄道の便をふやすとか、新たなコミュニティのバスを出すとか、いろいろ考えてほしいものです。

豊田市には過疎地もあるし、車社会の町(某自動車会社のお膝元)ですから、なかなか難しい問題ですね。


私たちが微力ながらやれることは、患者さんの身になって診察や検査をして、残念ながら認知症をうたがうことになったら、患者さんやご家族によりそって説得して、なんとか「自主返納」に納得してもらうこと、ぐらいですね。


これからも認知症にかかわっていく医師として、努力していきます。